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    2004-01-01  
    
  バーティミアス サマルカンドの秘宝
             理論社|ハードカバー
              著者|ジョナサン・ストラウド

 
  未読の方でも詳細は伏せてありますので、宜しければお読み下さいね。

  バーティミアス3部作の第1部です。
  英米で 2003-10の発刊前から映画化が決定し、既に日本を含め21カ国での
  出版が決まっています。
  
   チラシでこの作品を知り、「又12歳の主人公で3部作…」(なぜかわかり
  ませんが、ホントにこのパターンばかり)と思いつつ、「発刊前に映画化
  決定」が気になり、早速読んでみました。
 
   魔術師が政治を支配する現代のロンドン。
  親に捨てられた12歳のナサニエルは、魔術師の修行の為に、役人でもある
  アンダーウッドの家に引き取られた。
  ナサニエルは優秀な弟子だったが、それを認めようとしない師匠に苛立ちを
  覚えていた。
   とある事件をきっかけに、ナサニエルは中級レベルの妖霊(ジン)・バー
  ティミアスを召喚する。バーティミアスは傲慢で自惚れやでちょっとマヌケ
    だが、幾多の修羅場をくぐり抜けた、食えないヤツだった。
  ナサニエルは半ば脅す形で命令を下す。
  首相に取り入る若くて有能な魔術師、サイモンの持つ「サマルカンドのアミ
  ュレット(魔除け)」を盗んで来いというのだ。
   バーティミアスもナサニエルも互いの弱点を握りつつ、共存が最善の選択
  と、仕方なく協力する事になる。
  だが、アミュレットはとんでもない災いをもたらし、2人は何度も窮地に
  陥るのだった……
 
   まず、挿絵が一切なくて、シンプルですっきりした装丁が良かったです。
  プロローグを読んだら、後はもう止まりません。バーティミアスが一人称で
  語る第1章、召喚したペンタクルでの息詰まる攻防から始まり、様々な妖霊
  が入り乱れる怪しい舞台、ハデな魔術の応戦、クライマックスの最終決戦…
  映像化したくなるような場面の連続です。
  下段に注釈の形で、バーティミアスの自慢話(史実に基づくハッタリ(笑)
  や設定)が書かれています。ストーリーの流れを妨げてしまう今までの注釈
  と違う、上手い手法だと思います。氷山のように、ほんの一部しか本文に
  出ていないけど、背後の設定(骨組み)がしっかりしているとわかるし、
  オリジナルの世界観が魅力的なせいか、とても読み応えがあります。
   ナサニエルは有能なのに、いつも読みが浅くて後悔ばかり…
  もし、バーティミアスが上級レベルで性格がいいヤツだったら、失敗など
  せず、敵を蹴散らし、あっけなくラストに辿り着いていたかもしれません。
   
   ストーリー…『ハリポタ』は7巻通しての謎解き、推理小説風に先を予想
  出来る作品だし、ジョーンズさんの魅力は又違うものです。
  原書は未読なのでわかりませんが、日本語版はマンガのネーム(セリフ)の
  ようにリズミカルで、とても読みやすかったです。
   『ハリポタ』を意識し、『プルマン3部作』を目標に掲げたそうですが、
  又こんなスゴい作品が生まれてしまうイギリスって……
  文句なしにおすすめです。

   以下は内容に触れていますので、読後にお読み下さいね。

   ナサニエルとの別れはそっけないけど、らしくて良かったです。
    が、サイモンみたいになりはしないか心配です…
  バーティミアスはナサニエルの失態を笑い、バカにしつつも、成り行きとは
  いえ助けてくれるし、ラストでの大活躍ぶり(アマンダ)もアドバイスも
  痛快です。脇役で人気が出そうなタイプなのに、主人公なのも珍しい…
  イイヤツですね(笑)
  
   次作は今年発刊予定で、10月発刊の原書が12月邦訳だから、そんなに待た
  されずに済みそうです。