早いもので、前作から7年が経ちました。
2011−09、理論社の倒産というニュースに「えっ?!…」
『バーティミアス』は?! 続編はどうなるの?!
結局その後は不明で、今年の2月某日、本を片付けていたら同じ作者の『勇者の谷』
が出てきました。(残念ながらつまらなかったので、一度読んでそれきり)
翌日偶然ネットで理論社の文字を見て、「これは検索せよとのお告げ」(笑)と検索
したら、何と公式サイトがあるではありませんか。
そして右上に、今年発行されたばかりの「バーティミアス」新刊のお知らせ!
勿論速攻で購入、予約しました。
ソフトカバーで、丁度洋書のペーパーバックのような装丁で軽いです。
活字が大きめでスカ…ゆったりとした行間、翻訳も同じ方で一安心。
本編(前作)のような気が滅入るような重苦しさはなく、どんどん先を読みたくなる
展開で、とても面白かったです。
続きが気になる方は、3冊一気に読むといいかもしれません。
約3000年前、若かりし頃(2000歳)のバーティミアスの話。
バーティミアスは、指輪の魔力故に恐れられているイスラエルのソロモン王に仕える
魔術師(主人)を殺してしまう。罰としてエルサレムの丘の頂で、魔法を使わずに
神殿を建設する現場へ送られ、魔術師のカーバに使役される事になる。
そこには戦友フェイキアールもいた。
ソロモン王が従属させようとするシバのバルキス王女は、それを拒絶し、近衛長
アズラエルにソロモン王の暗殺を依頼する。
近衛長だった母と同じく、王女の為、国の為に自らの命をと決意したアズラエルは、
エルサレムを目指す。
バーティミアスと出会い、そしてソロモン王へと近づくアズラエルは果たして…
以下は内容に触れていますので、読後にお読み下さい。
7年のブランクなど全く感じさせず、ページを開いた途端に苦笑する出だし。
又会えて嬉しいよ(笑)
主人に対しては命がけのギャグ…嫌がらせをし、命令に従うフリをしつつ、逆に
仕掛ける強かさ。若い頃から今と何ら変わらないけど、少し丸くなったような気も
する(笑)
前作同様に動画でありありと場面が浮かぶ、簡潔でわかりやすい描写、テンポ。
妖霊という、魔術師に使役される奴隷でありながら、弱点−ペンタクルから出れば
殺せるから引きずり出せばいい… 立場が逆転すると、ああいう末路が待っている
とは…
良くある、御都合主義的に能力が増して強くなる…って設定になりそうな、その
可能性を潔く捨ててるのがいい(笑)
限られた中でどうするか、本編のキティのような出会い等もあるし、何とかしてしま
う展開だけど、ハラハラさせられます。
フェイキアール… 本編を思うと、ちょっと複雑。
アズラエルは美少女で、若いけど賢くて腕も立ち、しかも魔術を使える典型的な
ヒロイン…と思いきや、王女に仕える事を誇りに思い、それ故に死をも厭わずと決意
したのに、バーティミアスと出会い、無謀な暗殺計画を遂行しながら、気持ちが揺ら
ぎ、疑問を持つようになる…
ただ「バーティミアスを使役し、見事暗殺」などといった単純なストーリーではなく、
本編にもあった信頼や尊敬、そういった感情がある意味裏切られ、わかりやすいけど
飽きないし、単調なようでスリリング、ゴールは絶景。
ソロモン王も「え?!こういう人なの?!」と、段々と正体?がわかるような描き方で、
暗殺計画がこうなってああなって… この世界を「地球」と呼んでる… 指輪の精は
アラビアンナイトでも出てくる… 局地戦みたいな気がするのはなぜ… とか色々な
事を考えつつ、拍子抜…思いがけないオチ、若い頃の話だから当然だけど(笑)、
明るく淡々としたラスト。
読み終えてホッとしました。
後書きがバーティミアスの語りというのも良かったです。
20代後半−30代前半位で、生意気な若造的イメージだったのに、オヤジ=中年という
のは意外(笑)
続編が読めるのはいつなのか、もしかしてこの指輪が伏線となるのか?
忘れた頃に吉報が届くのを信じて、又気長に待とうと思います。
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