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|2011-09-01|2014-08-17| 更新
『サムライ・ラガッツィ 戦国少年西方見聞録』金田達也さん 全10巻
10巻(完結)の感想は一番下にあります。
|2011-09-01|
某通販のおすすめで、この作品を知りました。
作者名に見覚えが… もしかして『あやかし堂のホウライ』の?
検索したらやっぱり…で、ハズレなしとふみ、3巻まとめて買いました。
ラガッツィ=少年達だそうです。
天正10年(1582年)、織田信長の死から物語は始まる。
試し読みはこちらです。
九州の小国播磨家当主、15歳の播磨晴信(はりまはるのぶ)は、自ら測量
して地図を作り、自室は標本や洋書などであふれかえり、兵法も剣術も
てんで駄目。周囲には見限られ、「うつけ(馬鹿)者」と呼ばれていた。
世の中の全てを知り、それを書き記した百科事典『萬國(ばんこく)大百
科』を作る。
隣国から羅馬(ローマ)行きの使節団をとの催促に、晴信はその夢を叶え
る為、自ら出向く事を宣言。だが、海外に出て生還する確率は極めて低く、
募集しても供は現れなかった。
正室の徳泉院は、側室の子晴信を疎ましく思い、実子宝丸をと命を狙う。
徳泉院の命で暗殺を企てた朧夜叉(おぼろやしゃ)こと桃十郎(ももじゅ
うろう)は、織田信長の自害で夢−天下一の男の暗殺−を断たれ、自暴
自棄になっていたが、晴信との勝負に負け、1年間だけ主従関係を結ぶ事
になる。
領民には慕われる晴信は、天正遣欧使節団−伊東マンショら4名と共に、
ポルトガル船サンティアゴ号で出港する。
(中略)澳門(マカオ)で出会った漁師の少女江(コン)は、晴信に酷な
現実を突きつける。(中略)明との密貿易の報復に殺害されたポルトガル
船−明の暗殺者との死闘、そして東方伝道司祭マテオ・リッチと、従者
エステベスとの出会い(中略)は意外な展開に…
戦国時代が舞台なので、正直よくある「天下を取る」みたいなストー
リーかと思いきや、主人公が抱く野望?は「知識欲」。
森羅万象、何でも知りたい。自分が士(さむらい)に不向きで、領主と
して望まれていない事も、人の死の痛みもよくわかっていて、無謀と知っ
ていても行動に移し、決して夢は捨てない=生きる目的だから…
リアリストでロマンチスト。相反する2つの感情が同居する、参謀タイプ
の面白い主人公だと思いました。単純でノーテンキだったら、初回で暗殺
されて終わりでしょう(笑)
検索したら、モデルは有馬晴信のようです。
藤田和日郎さんの元チーフアシで愛弟子とあって、『ホウライ』(こち
らも面白いです。おすすめ)の頃からキャラの絵柄や性格、作風が似てま
すが、金田さんの個性がしっかりと出ています。瞳が角ばってるんですね。
殆どタチキリの紙面、よく見ないとどうなってるのかわからないシーン
(描き込み過ぎ(笑))とか、勢いで「そうなんだ」と納得してしまう
エピソードとか、マンガならではのハッタリが痛快(笑)
自覚はないだろうけど、一人シリアスキャラの桃十郎が、主人の晴信に
感化され、「信頼される」嬉しさ=新たな生き甲斐?となってゆく…
派手なバトルもただの見せ場ではなくて、こういう成長、変化を描くエピ
ソード… 走り出すキャラを、追いかけて描くとこうなる… そんな気が
します。おのおの勝手に暴走して大変そう(笑)
1年なんてあっという間だけど、更新するんでしょうね。
…あんなに斬りまくったら、刀毎回研がないとダメだと思うけど、どう
してるん…(勿論自分で(笑))
マテオは実在した人物だから、設定は史実通り…とすると、帰国時に
再会? 自他共に認める天才で、驕りをエステベスにたしなめられる事も
しばしば。この時晴信15歳、リッチ30歳ですね。
桃十郎は修行15年だから20代? エステベスは案外若いような気がする…
あの耳といい、人心掌握の手法(賄賂(笑))といい、食えない人物…
同行しないから、このエピソードを作ったんでしょうか?
確かに数話では勿体ない。
瀕死の重傷の桃十郎を放り出し、らくだに駆け寄る晴信(笑)
ヴァイオリンは湿気が大敵とか、刃物ぐさぐさ刺さっても無傷の『萬國
大百科』の強度とか、武器仕込んだら動く度血まみれとか、そういう
ツッコミはヤボというもの(笑)
祈りや説得が通じず、死ねば殉教者。マンショ達の行動を見てると、
「諦める」事でも、いかに無力で空しくとも、信仰故の信念なんですね。
晴信の真似は出来ませんが、簡単に諦めるのも何だか…
「知で足掻く」は、晴信というキャラならではの名台詞です。
第一ノ項の多栄や、顧憲成など、ゲストキャラのエピソードもいいし、
善と悪のキャラの描き分け方(顔じゃなくて目の輝き)もいい(笑)
特に第八ノ項。上下で同時進行のアクションシーン絵巻物。
縦に一コマ繋がったりと斬新な表現で、テンポもメリハリもいいけど、
手間は2作分かかってるような……
カバー下が設定なのも、設定好きなので嬉しい(笑)
誕生までの紆余曲折(?!)はスゴイ……
時代的背景とかコスチューム、船や武器や風俗等、資料も大変でしょうね。
8年間の航海? 晴信は自分が使節団の一員という事を思いっきり忘れて
るような気がするけど、今後が楽しみです。
大団円だといいんですが……
|2012-01-01|
4巻の感想です。
…………………
まるで別の作品…
ヘヴィメタが環境音楽になったかのような、この寂寥感、静けさ、ひん
やりしたカンジは…… マテオが別人。少女マンガかと思いました。
(アシさんがペン入れ?)
出ているキャラは同じ。ただ、晴信の出番が殆どないだけ。
裁ち切りだらけだった紙面はすっきり、余分な線がごっそり削られ、細く
なってる… 余白が多いのと、キャラの線が別人のようにキレイ(苦笑)
に…
読者から「見づらい」とか、編集が変わって「これじゃゴチャつきすぎ
ですよ、もっとイマ風に」とか言われて、絵柄を変えさせられたんでしょ
うか…? 楽しみのおまけページも、何だか「遠慮がちに載せました」と
いう萎縮したカンジ。寂しいな…………
プロは制約があるから仕方ないのでしょうが、正直残念です。
最初からこの絵柄なら、前回までの感動が8割減だった事は確かです。
(…とか書いたけど、読み返したら何とも思いませんでした(笑))
天才故のプライドを脅かす、東洋の小童。晴信の怖さがわかるからこそ、
知れば知る程余裕が無くなり、悪口となって表に出、エステベスにたしな
められる… 命を預けてる信頼故に苦言を呈する。単なる従者ではない
(注・他意はありません)、晴信と桃十郎が構築しつつあるものを持って
るな…と思いました。マテオの心中を見透かす桃十郎の一言に動揺する
シーンは、認めたくないという戸惑い、他人に看破される程なのかという
のがよくわかりました。セリフは少ないけど、美味しいとこ持って行き
ますね。(饒舌な忍者もイヤだけど(笑))
マテオの心境の変化にハラハラし、自分を超えるかもしれない怖さ=若さ
故の可能性(伸びしろの差)を持つ… 才能のある若手を潰したという
某指揮者みたいになったらどうしよう…史実なら大丈夫の筈…などと、
読み進むのがちょっと怖かったのですが…(晴信の生存の可能性がない
って所は、本気でそうあって欲しいと思ってたんだろうな… 自分が醜い
感情を持ち、脅かし続けられてはたまらない… で又自己嫌悪)
本心など恐らく全く気づいていない(多分関心がない)晴信の未来を暗示
するようで、とても良かったです。
予想通り若かったエステベス。あれで歴戦の勇者とは、一体何歳から?!
顔を隠していたのは… あれは生まれつきって事?
(仮面の割れる音で戻るシーンはスゴイ)
ヴァイオリンと能力が効果的に使われていて、相変わらずの面白さでした。
…帰ったら別々の目的地を目指す=2人ともお別れですね。
ずっと一緒では気まずいだろうし、やがてあるかもしれない再会時に期待
します。
江はどうするんでしょう? 女性キャラいないと殺伐としそう(笑)
ハッピーエンドで良かったです。
晴信の「運命」に対する毒舌っぷりは、母の生き様故だったんですね。
決められているからあきらめろ? 冗談じゃない。
破天荒に思える行動も、揺るぎない信念も、怒りや侮蔑も、こういう過去
があったから…… 厚みがあるから、説得力が違いますね。
無表情な仙女は人間じゃないから、晴信に感化されなかったのも上手い
描写です。
…良かった(苦笑)
キャラそれぞれの生き方が交錯し、鮮やかな織物を織り上げるような緻密
さ、発想の大胆さは今まで通り。
今回からシンプルなパターンになっただけの事。
舞台が変わり、今後はどんな模様になってゆくのか?
5巻が楽しみです。
|2012-04-04|
5巻の感想です。
…………えっ……?!
あ、そういう意味じゃなかったんですね(苦笑)
エステベスが女性…… 伯爵家の令嬢が、実戦であれほどの功績を上げる
もの? あんな華奢な体で剣振るって、マテオ乗っかって大丈夫?!…
なんて気にしない。信仰故の戦略、命の恩人と、自分の信念の為に生き、
布教に一生を捧げる… 愛情よりも信頼、互いになくてはならない存在に
なったのは、こんな過去があったからなんですね。
マテオは、晴信が自分を超えるかもしれない可能性=矜持故に否定して
きたのを認めた事で、ある種吹っ切れて、最初に出会った頃に戻ったよう
で、ホッとしました。エステベスも桃十郎を認めた?
1巻以上かけて、マテオの気持ちの変化が明→陰る→ドロドロどよーん→
混沌→あ、やっぱりスゴイわ→すこーんと快晴…と、細かいエピソードを
入れながら丁寧に描かれ、互いに目的の為にという生き様は同じと、キャ
ラへの思い入れがよく伝わってきました。
北京へ向かうと、中華風のコスチューム(ヴァイオリンがすっごい違和
感(笑))になっても、エステベスは元のまま。
欲しがるばかりで、あげるものがないと慌てる晴信。
…一番恐いのは、他人に与える影響について、全くといっていい程自覚が
ない事(笑)
北京での短編が巻末にあったけど、晴信との再会はないのか…………
江との別れ… 思い故に拒絶する晴信に感謝しつつも、こちらは吹っ
切れない… ちょっと年上だったんですね。
釣り竿に縋る、あのカットが切ない…
「空白が埋められない」のがなぜか、答えが出ないと呟く晴信。
桃十郎の「けっ」… わかってる(笑)
花火と餞別、このエピソードも良かったです。
仙女じゃなかった?! 同行するの?! インドまで?
晴信に「運命に逆らう生き方」と言うけど、易通りに生きるのも信仰の類
では… 変わらないし変えないのはお互い同じ。
マカオ編(?)、とっても面白かったです。
ここから勝手に「黒き阿修羅(アスラ)編」。
マンショ達一行が、さりげなくコスプレ(違)してる(笑)
極彩色、多民族が行き交い、晴信はテンション上がりまくり(笑)…から、
何と多栄との思いがけない再会。布教のウラに人身売買があり、だから
キリスト教が禁止になった…なんて、歴史の教科書には出てきません。
武士としては情けない程ダメな晴信だけど、2度も助けられた。
マンショの怒りは、無力な自分へも向けられていたりして…
…で、新キャラのルンディン登場。鰐素手でボコってたけど、桃十郎の
恐ろしさに早々と気づいた?
勝利=自らが生きてこそではない(死に場所探してる?)というのも、忍び
故か…
頸動脈かすってたけど、縫えば大丈夫!(違)
『丑の刻参り』みたいな晴信、医術の心得はない筈だけど、まさか実践を
兼ね…
騙されていたと知り、一時的に共同戦線張る事に。
エステベスが教えてくれた「黒き阿修羅」とは一体…(巻末のキャラ?)
信長亡き後、秀吉が放ったくの一。…アユタヤまでどうやって来るんだ
ろ…いえ、「殺せなかった」不如帰と、女運がとことん悪い桃十郎との再会
は果たして…
4巻よりも少し前に戻ったようで、読みやすくて迫力があって良かった
です。ただ、女性キャラの露出は、出し惜しみ位の方がいいと思う(笑)
6巻が楽しみです。
6巻の感想です。
「黒き阿修羅(アスラ)編」(勝手に命名)は熱帯だけど薄ら寒い。
日本では、阿修羅といえば興福寺のが有名ですが、ルンディンの方が本来
の姿?に近いですね。
マンショが驚く晴信と桃十郎の「変化」… マンショもかなり変わった
けど、自覚はないのか(笑)
カッとなると見境が… ちょっとイヤな予感。
「1年の主従関係だから」と、人は殺めない桃十郎。ルンディンの疑問は、
マンショ同様晴信を、成長を間接的に描いてますが、こういう視点は数
コマのエピソードだけど、わかりやすくてとてもいいです。
ルンディンの親友であるナレスワン王子は、眉と稲穂が特徴の変わった
人。庶民的で…ってルンディンボコってる(笑)
タイだけにシャム猫、『マッハ(以下略)』もバネが物凄い、人間とは
思えない動きだった(普通に歩いてヒョイと他人の肩へ乗るとか)…など
と考えつつ、誰かに似てるな…と思ったら、晴信と意気投合(笑)
…理想の国の為に、民を思って慕われている。晴信にもルンディンみたい
な親友(理解者)がいたら、海外に目が向いたのか(決して跡目争いで
勝ち目がないから、逃げたいという意味ではありません)
敵地ホンサワディー王国へ行くのは…………
…忍びはオールマイティー、不可能なんてない。マンガだし(笑)
晴信は腕もからっきしだし、領主と見える威厳や品もあんまり…
マテオ伝授のテク(笑)ですんなり中へ。
ルンディンが明かさなかった「黒き阿修羅」とは……
「?!」なんとか演義のあのキャラみた…… え?!
皇太子マンサムキアットって、そりゃないよと思ったのは内緒(笑)
今までの敵役は、イッちゃってるアブない刃物好きというのが多いですが、
今回もそれを踏襲してます。
殺気を発して様子見のページ、コマ割りが面白い。
…マンサムキアット、ミバ故に真ん中じゃなくて、もしかして一番コワイ
かも。
神の加護(権威)で謁見し、晴信達の為に尽力するマンショ。
タイプは違うけど、信仰=強固な信念というのは晴信と同じ?
多栄救出作戦が、ブチキレた晴信により全員救出作戦に変更。
象の頭皮は厚いから、そうやって操るんだ…とマメ知識を得つつ(役立つ
時はないだろうけど(笑))、イナバ物置的なビジュアルに正直絶句。
…そんな事に一々驚いてたら、この作品読めません(笑)
マンサムキアットがルンディンの……?!
ルンディンは……
つまり、マンサムキアットの出自は…(三段論法)
桃十郎が手汗を… 「ピッティ」とやらは臭い?でクナイをかわした…
手が人間じゃない?
珍しく晴信が敵を挑発。絵になるけど、代償がものすごく高くつくの
では……
オマケのタイ紹介や、カバー下のすごろくも凝ってる…けど、キャラ
設定が見たかったです(苦笑)
次回予告では、どうやら今まで(一緒にいたからこその相乗効果)とは
違うようで、更にハンデ背負ってどうするの状態…
チラッと出た不如帰は、晴信をどう見るのか(会わなかったりして(笑))
…7巻は多分年末。楽しみなようなコワイような…
|2013-01-06|
7巻の感想です。
米が恋しいのではなくて、食糧枯渇… 一体何が?
不如帰はこの決戦の後に?
ナレスワン王子達が手出しが出来なかった原因が、晴信の奪還で…と、
一番回避したかった戦へ… ↑眉が同じ(笑)
火薬兵器がヤケに近代的なデザインのような気がするけど、晴信の呟きは
尤も。
雷直撃他と、今までとは別人のような口調(多分)で嘲り、挑発する
合わせ技(ルンディンの真似ね(笑))決闘を挑む晴信。
失うものがないからの強さ、考え抜いた事前の策=晴信が「知」で戦う…
日本での過去を丁寧に描いているのと、航海での体験や得た知識、出会い
があるから、説得力が違います。
やっぱり仙女だった蓮玉。鎧持ってきてたんだ…
てっきり旅の途中で別れるのかと思ったら、ここで別行動の意味だったん
ですね。三位一体の攻撃を破るにはそうするしかないけど、同時にこちら
も不利なワケで……
別れただけではなくて、敵の正体が看破出来ないという更にハンデで、
誘い込んだ=こちらが有利というのがほぼ帳消し。
体力の消耗、冷静な観察眼、そして形勢逆転……までがハラハラさせる
展開、見た事がない「知」というより「奇策」と思えるような仕掛け。
考えてみれば、この2人がいるから他国を支配出来ていたのなら、それに
勝った(と思いたい)晴信と桃十郎は……
…多栄の祈り、両手を合わせるのが離れた2人をつなぎ、又戻れるように
という意味もあるんでしょうか? マテオ達の「音」みたいでした。
日本から続く多栄の想いは、もしかしたら…
マンサムキアットがマザコンだったとは… ナレスワン王子とルンディ
ンとは幼なじみ? 渇望を満たす存在が、自らも渇望しているというのは
皮肉。
…まさか「こいつが一番強いなんて?!……」…いや、意表を突いて和平
とか……
オビに「絵が上手い」とあったけど、「スゴイのは絵だけじゃないから」
とツッコんでしまいました(笑)
確かにキャラの顔がどんどん変わり、寂しく感じた余白も、迫力ある戦闘
シーンとのバランスもペンタッチも洗練されて、とても見やすいです。
…初期の、粗いけど真っ黒だった頃の方が好きだけど、それで敬遠される
のは勿体ないし… 連載途中で、ここまで舵を切れるのもスゴイ。
成長や変化がよくわかる、説得力のあるストーリー構成と、1巻から
「そういうもの」と思わせ、何でも描けてしまう物凄い画力。
両方共揃っていて、しかもレベルが高いのだから、面白くないワケがない。
キャラ設定(ラフ)の初期版晴信よりも、今の方がいいです(笑)
カラーがコピックっぽいから、アナログ?
色遣いがかなりソフトになり、別の作品のような激変っぷり(驚)
地獄を見てきた晴信と桃十郎。主従関係の更新は……勿論?
8巻が楽しみです。
|2013-05-01|
8巻の感想です。
死闘もナレスワンとマンサムキアッドの一騎打ち……じゃない(苦笑)
最後まで予断を許さない展開の中、きちんとルンディンとナレスワン、
マンサムキアッドの過去のエピソードか語られ、だから今があるとよく
わかる。単に「親友だから」とセリフで言うのは簡単だけど、読者はそう
なるまでを読みたいワケで(笑)
そういう描き方をしてくれる作品は、ホントに数える程。
死んでいった者達を全て覚えている…ああ、某作にも似たシーンがあった
けど、あんなヤツ(ファンの方済みません)なんかと比較するのは失礼。
決め台詞は、そうだというエピソードがあるから光るんです。
悪役も憎ったらしく、武器やアクセも丁寧に描き込まれ、スピーディだけ
どよりキレイになった線と構図、見守る兵達、民…
晴信と桃十郎のいいエピソードを入れて盛り上げつつ、最後に……
……成長したマンショ。最初はすまして「神がなんたら」言ってたけど、
そんな説得が無力だと悟った頃が嘘のよう。
組織をバックにハッタリかますとは、随分たくましくなったなとしみじみ。
誰かに感化されたのは言うまでもないでしょう(笑)
酒癖の悪さ…酔うと出るのが本性らしい。多栄が別人のよう。
衣装で印象は大分変わるものですね。
灯籠を空に…という国は結構多いけど、川に流す日本が珍しいのか。
勝利は一時と、宴の外で思案するナレスワン。
桃十郎をいなす……あれ?! ナレスワンって何歳?!
史実だと1555年生まれで1583年だから、28歳? ルンディンは20代前半位?
上に立つ者がこうなら民も幸せ。それぞれのキャラの成長、その後がわか
るようなフォローもきっちりで、「黒き阿修羅(アスラ)編」(勝手に
命名)見事完結。
実在した人物と、知らなかった国のこの時代の空気が感じられる紀行もの
風だからか、ここまで29話なんて信じられない。既に30巻位読んだような
濃さ(笑)
次の舞台はインドの「ゴア」。航海中に現れたのは…
やっと不如帰登場。本名は「喜九」。晴信が出るとややこしくなるから、
こうしたのか…
出会った頃のエピソード、そして「不被斬(きられず)」の意味。
夢を見る、身の程知らずは生きられない。だから見ない。
それが不如帰の考えだから、桃十郎が一番大きな夢を持ち、その夢が潰え
た(信長は自害した=殺せなかった)のになぜ(生き残れたのか)?、
どうしてあんな晴信に仕えるのか理解出来ない。
傍目には、好奇心旺盛な子供にしか見えないから。
「わからん」「ウチらは道具」…現段階での2人の本心。
道具として生きる以外の選択肢がある事を、洗脳が解けていない不如帰が
知るには、桃十郎のように強烈な光(夢)を見るしか…… ?!
続きの、影のめちゃくちゃ薄いヴァリニャーノ視点(ちょっと違(笑))
のエピソードは、マンショと蓮玉(リャンユ)、マンショ以外の3人が
主役。晴信と桃十郎が出なくても、イカとロック鳥で冒険ものに(笑)
マンショの女装がキモかったのが意外(笑)
晴信の知識を誰でも見られて、しかも活用出来る。
もう個人の備忘録ではないという描き方は、将来を暗示(不吉な意味では
ない)しているのか…
巻末の「その後の多栄」。3Pだけど、日本で待つじい勝秀と多栄…
…チラッと「晴信は日本に戻らないかも」と思ったけど、それはないです
ね(苦笑)戻る頃は、秀吉天下統一、そして関ヶ原へ…?
単行本を予備知識なしで読みたいので、ツイッターも本誌のサイトも
見ていません。
巻末の予告では、「新タイトルで第1巻、でもこのストーリーは続く」と
あったんですが…… 掲載誌が移る訳じゃないのに、タイトルを変更?!
まあ出るからいいけど、なぜそうなるのか不可解(苦笑)
…で、余計な情報見ないように注意しながら、サイト確認したら……
タイトル同じで、センターカラーでした(笑)
カバー下の設定が、次回からのコスチュームですね。マンショ達が着物風
なのは、洋装よりも涼しいから?(多分違)
9巻が楽しみです。
|2014-05-01|
9巻の感想です。
ここから「新天地ゴア」編(勝手に命名)。
巨大で珍しいものばかりの土地、いつもにも増してハイテンションな晴信
だけど、過去の体験故の余裕、見切りも更に進化?し…と、成長ぶりが
伺えます。
…第3の選択肢は、桃十郎あってこそ。こういうシーンも見納めなのかと
思うと、何だか寂しい……
舞台背景がややこしいので、ちょっと書いてみると…
北部 −ムガール帝国(アクバル)→下の対立の間に徐々に巨大化
イスラム教だがヒンドゥー教にも優しい
その下−ムスリム5王国 イスラム教
VS
ヴィシャルナガヤル王国 ヒンドゥー教
ゴア(インド副王)ポルトガル人統治の西欧風 キリスト教
アユタヤで定着した仏教はインドでは衰退し、ヒンドゥー教にとって代わ
られたそうです。
桃十郎が出会ったのが、ゴアに偵察に来ていたアクバル。
インド統一を志す、信長にソックリの……
…漠然とした形ではなく、しかも「咄嗟に使役」という、「ああ、この人
に仕えるんだな…」と、ひとひねりした納得のいくエピソード。
(桃十郎って白髪だったのか…)
以前に比べると、戦闘シーンやアクションシーンが直線ではなくて、魚眼
パースやシルエットなど、曲線になっているのは、作風の変化?
それとも演出(舞台が違うから描き分け)? こういう違いもスゴイ…
柔らかいけど動きが複雑で、しかも見易くて迫力が増してます。
別れを既に予見している(と思う)晴信が出会ったのは、父方の祖父が
日本人で、さむらいに憧れるアンジロウ。
キリシタンなのに、久々にいつものマンショ(教えが統一の手段…)とは
正反対の考えを持ち、晴信と意気投合。
桃十郎と2人だと助さん格さ…いえ、攻撃の幅が広がるというか、何とも
頼もしい。けどこれも(以下略)
新たなる敵「サッグ団」。知識が武器の晴信も、未知なるものが相手
では… そういう時は既知の中から手懸かりを見いだせばいい。
…毎回思うのは、敵の設定の斬新さです。
血流を制御(イカか(笑)あれ二重だと知ってビックリ)、あの呟きは
その為の「呪文」みたいなもので、しかもそれが数式とは…
更に、リャンユの意外な一面が(あれ? インドでお別れじゃ?)…
数が支配する。考えてみれば、時間も暦も、空間の単位も重さもそうです
ね。
晴信の新たなる目標と共に、不吉な終わり方……(早々と……?)
今秋最終巻……待てません(苦笑)
(休載再開が5月号かららしいから、4話掲載として、3話は掲載誌で
読めると(↑バックナンバーがある?!)……)
|2014-08-17|
10巻(完結)の感想です。
実はバックナンバー含め、本誌を初めて購入し、3話(ざっと一度だけ)
読んでしまいました(苦笑)今後の告知等も見たかったし…
サッグ団の地下神殿−円形の迷宮の次は真っ暗な空間。
教主「ラーヴァナ・ガニタ」(誰かに似ている)は、おどろおどろしい
不気味キャラではなく、意外と普通(笑)
暗闇と錯視の攻撃(自分達が圧倒的に有利)にかなり自信を持ち、晴信
達を軽視… ゲームみたいな頭脳戦だからか、教主の割には…と思っ
たら、どうやらラスボスがいる模様。
晴信が突破口を示し、アンジロウが開ける間に教主は…
「数学的な人減らし」というのもスゴイ。誰が教えたのか、目的は何
なのか、この辺りが謎になってしまったのは残念です。
晴信と桃十郎の、1年間の契約が切れるまであと僅か。
ここで新たな主人を…というのが前巻からの伏線ですが、晴信は止め
ないだろうし、桃十郎はどちらを選ぶか?
完結なら、別れという可能性もある?
正直、新たな従者に不如帰が来たりして…などと、突飛な予想をして
ました(苦笑)
蓮玉(リャンユ)と教主に数学を教えたのは違う人物?
身分に関係なく、有能な人材を登用。古い慣習を破り、好奇心旺盛。
人を惹きつけ、才能を見抜いて適材適所に…
信長の天下統一は「通過点」であり、最終的な目的は海外へ出て行く事。
桃十郎の渇望していたものは「光」。
晴信の渇望するものは「あらゆる知識」。
「光」の側にいる影のようだった桃十郎が、アクバルや不如帰の言う
通り、実は既に「光」の中にいたんですね。
迷ってたクセに(笑)、それを自覚した途端に「別れを言いに来た」的
なセリフが微笑ましかったです。
最初は険しい、醒めた顔をしてばかりだったのに、ラストに向かって
表情が変わり、前髪も短…いえ、はっきりと正面を見据えたような視線
(もう迷わない)になったのは、居場所を見つけられた嬉しさでしょう
か。
新たな旅立ちの前に大ピンチのゴア。
晴信の策は、蓮玉の特訓の成果を遺憾なく発揮し、壮大な仕掛けが作動
するが如きピタゴ…展開、懐かしいキャラ(元気かな…)でパワーアッ
プした事を描きつつ、不如帰にもきょとんとした顔をさせ、蓮玉の笑顔
(「例外」に出会え、それを認めた事が我ながら驚異だったりして)に
桃十郎の笑顔?!とキッチリまとめ、最後はまるで11巻があるかのような
船出……(掲載はここまで)
…総括的な後書きはなく、代わりに描き下ろしの2P。
お供が見つからなかった旅の始まりも、恐らく唯一の理解者のじいと、
大人になった多栄の破顔…(晴信を慕う領民の笑顔もとってもいい)
嬉しい(じいが元気で良かった)やら、ここで終わらせたかったであろ
う複雑な思い(涙も涸れ果てた、達観的淡々さ)が悲しいやらで、泣け
ました。
雑誌そのものの売れ行きも悪化する一方で、廃刊→違う掲載誌へと
変わったり、web 連載→単行本化の作品もかなり増えました。
「大丈夫だろうか」と、単行本が出る度に不安でした。
掲載誌がマイナー(発行部数が3万部位?と最低だったとか)で知名度
がなさすぎたのと、子供が読むにはちょっと難しかった(大人になら
ないとわからない面白さ)のかもしれません。
一言で言えば「勿体ない」です。
やっとツイッターを見られると、この感想を書きながら読んでみると
…… 個人的な呟きがリツイートに埋没してる(苦笑)
9巻と10巻の表紙は繋がってるそうです。(…ホントだ)
旅は途中で終わってしまったけど、その後をダイジェストで描かな
かったし(もしこうなら本当に終わりだし)、1年の契約というテーマ
は見事に描ききったので、そういう意味では本当に良かったと思います。