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  D.W.J

粗筋と大雑把な感想


                        
    上流と下流の階級差が、はっきりと別れていたヴィクトリア朝時代。
    広い湾に面した廃墟の城を買ったホーンビー氏は、どちらでもない微妙な
    農場主で、妻は亡くなり、息子アレックスは12歳、姉のセシリアは16歳
    だった。
    姉弟は城での新生活が気に入らず、一番イヤなのは、自分達より上のコー
    シー家とつき合わなければならない事だった。
    寄宿舎に帰るのを渋るアレックスと、おてんば故に家庭教師が辞めたセシ
    リアは、家政婦のガトリーから昔話を聞く。
    「百年に一度、湾を横切る騎士を見た者は、1年以内に死ぬ…」
    この話を聞いた後で、宿題をセシリアに手伝って貰おうとしたアレックス
    達は、室内に見知らぬ男がいるのに気づく。
    中世の騎士の格好をしたロバートとの出会いがきっかけで、アレックス達
    は違う世界へと通じる道を通り抜け……

                      
    出版は後ですが、ジョーンズさんのデビュー以前に書かれた、6つの短編
    集のひとつだそうです。
    メインキャラ、違和感を感じさせない世界等、ジョーンズさんらしさは
        既に出ていますが、ページ数の割にはエピソードが少なく、展開も割と
        単純で、ラストも…と、割と大人しめでした。
    特に、大人キャラが普通すぎて物足りません(笑)
    
    余談です。
    タイムスリップものはよくある設定ですが、これを越える作品にまだ巡り
    会いません。1939出版、アリソン・アトリーの『時の旅人』です。
    20世紀のイギリスに生きるペネロピーが、16世紀の先祖の時代と何度も
    行き来しながら、史実通りになるのを何とか阻止しようとするが…と、
    内容が濃く、重く、最後の一行が秀逸で、切ない読後感を残す名作です。